大腸ポリープとは
大腸壁の表面は粘膜に覆われています。大腸ポリープは、粘膜層の一部がイボ状に盛り上がったできものです。
腫瘍性と非腫瘍性に大別されます。そこからさらに、腫瘍性は良性の腺腫と悪性のがんに分けられ、非腫瘍性は過形成性ポリープ、過誤腫性ポリープ、炎症性ポリープに分けられます。腺腫は放置しているとがん化する可能性があります。
大腸がんの発生機序は、正常粘膜にできた腺腫ががん化するケースと、正常粘膜にいきなりがんが発生するケースに分けられます。前者については、腺腫の段階で切除することで将来的な大腸がんの予防に繋がります。
大腸ポリープの原因
ポリープ自体は、遺伝子の異常が発生原因となることが多いです。
大腸がんは、加齢や家族的、肉類や高カロリーな食事、肥満、アルコールの過剰摂取、喫煙などがリスク要因となります。ここに遺伝子の異常が加わることで、ポリープが発生して将来的にがん化すると考えられています。
家族歴の例として、家族性腺腫性ポリポーシスという疾患があります。この疾患は、数百から数万と多数のポリープが大腸粘膜に発生しますが、遺伝が原因となることが分かっています。10歳頃からポリープが発生し、20歳頃に診断されることが多いです。加齢に伴ってがん化する可能性が高まり、放っておくと将来的にほぼ確実に大腸がんを発症すると考えられています。
その他、リンチ症候群と言って、ポリープの発生数は少ないものの大腸がんが家族内で多発する疾患もあります。そのため、血縁関係者に前がん病変である大腸ポリープや大腸がんが見つかった場合、早めに検査を受けることをお勧めします。
大腸ポリープの症状
大腸ポリープは自覚症状が乏しいことがほとんどです。ポリープが小さい場合は特に症状が起こりません。そのため、前がん病変の大腸ポリープを早期発見するためには、定期的ながん検診が欠かせません。 なお、肛門付近にポリープが発生し、血便や粘液便が出ることもあります。また、滅多にありませんが、ポリープが巨大化して大腸を塞いだり、肛門から飛び出したりすることがあります。
大腸ポリープの検査方法
大腸ポリープのスクリーニング検査として便潜血検査を実施します。便潜血検査は便中に目視では確認できないほどの微量な血液が混ざっていないか確認できます。
2日間の便を採取して、そのうち1日でも陽性反応が出た場合、精密検査として内視鏡検査を実施することが多いです。
便潜血検査では、大腸ポリープが見つかる確率が約30%、早期がんは約50%、進行がんは90%以上となります。これにより、がん化リスクを46~80%低下させることができ、がんによる死亡率は約60%低下できると言われています。
また、便潜血検査で陽性となった場合だけでなく、既往機や家族歴から大腸ポリープの可能性が考えられる場合、もしくは腹痛や血便、便が細いなどの症状がある場合は、大腸カメラ検査を実施します。
大腸がんの精密検査には、大腸カメラ検査以外にも注腸レントゲン検査があります。この検査は、ポリープのサイズや形状、位置などを調べるのに有用ですが、事前処置が十分でない場合、あるいは腸が重なっている場合、正確な診断を行えないことがあります。また、組織採取ができない点、レントゲンによって被ばくする点もデメリットです。一方、大腸カメラ検査は内視鏡スコープを肛門から挿入して大腸粘膜を直接観察できます。病変のサイズや形状に加え、血管の状態などから病変の範囲や治療の要否を判定することも可能です。
ポリープが検査中に見つかった場合、まずは治療が必要なポリープなのか確認します。これには色素内視鏡検査が用いられ、人体に害のない青い色素剤を病変に散布して病変部分を強調します。また、特殊光を当てて表面を照らし、内視鏡で病変を拡大して観察する方法もあります。治療が必要と判断した場合、良性の腺腫なのか、あるいは悪性のがんなのか鑑別を行います。
内視鏡で拡大して観察することである程度は判断できますが、基本的には病変組織を切除し、病理検査に回して確定診断を下すことになります。
ポリープは内視鏡を用いた治療で済むことがほとんどですが、手術が必要な場合もあります。
大腸ポリープの治療法
ポリープやがんに対する内視鏡を用いた治療法は複数の方法があります。
主な治療法には、「ポリペクトミー」「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」が挙げられます。ポリープのサイズや形状に応じて適切な方法が選択されます。
ポリペクトミー
茎のあるポリープに対して行う方法です。内視鏡先端からスネアと呼ばれる金属のワイヤーを取り出して、ポリープの茎に取り付け、高周波電流により取り除きます。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
茎のない平べったいポリープに対して行う方法です。粘膜下層に生理食塩水を注入し、浮かび上がらせた状態でポリープを取り付けて、高周波電流により切除します。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
サイズが大きいポリープなどが対象となります。
粘膜下層に生理食塩水を注入し、電気メスによりポリープの周囲の粘膜を切開し、徐々にポリープを剥離する方法です。
当院の内視鏡治療
前がん病変である大腸ポリープは、大腸カメラ検査中に発見された場合、検査中に切除することができ、治療が終わればご帰宅頂けます。
内視鏡検査での観察自体は10~20分ほどで終りますが、ポリープの切除を行う場合も30~40分ほどで終ります。なお、ポリープを切除した場合、出血などの合併症を予防するためにいくつか制限が入ります。
当日は、刺激物の摂取や入浴は控えましょう。飲酒については医師が許可を出すまでお控えください。その他、複数の制限事項がありますが、多くは数日間となります。巨大化したポリープや早期の大腸がんを内視鏡的粘膜切除術(EMR)にて切除した場合、制限が1週間入ることがあります。
ご自宅に着いてかた何らかの異常が起きた場合を考慮し、事前に緊急連絡先をお伝えします。当院では、過去に重大な問題が発生したことはないですが、もしもの時にすぐに適切な対応を取れるようにしています。安心してご受診ください。