ピロリ菌の除菌治療
東京ピロリ菌研究室⑤
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はじめに
このページでは、ピロリ菌除菌の標準治療(一次除菌・二次除菌)と抗生物質に対する耐性菌、除菌中の副作用などについて説明します。
◎目次
1.ピロリ菌除菌の標準治療
・一次除菌
・二次除菌
・除菌療法におけるプロバイオティクスの効果
2.抗生物質に対する耐性菌について
3.除菌中の副作用
4.除菌中の注意事項
5.三次以降の除菌
1.ピロリ菌除菌の標準治療
一次除菌
現在、保険適応の一次除菌治療は下記になります。
・制酸剤(ボノプラザンなど)
・AMPC(アモキシシリン、抗生物質)
・CAM(クラリスロマイシン)
・整腸剤(医師の判断による)
7日間内服する
二次除菌
現在、保険適応の二次除菌治療は下記になります。
・制酸剤(ボノプラザンなど)
・AMPC(アモキシシリン、抗生物質)
・MNZ(メトロニダゾール)
・整腸剤(医師の判断による)
7日間内服する。
現行の保険適応の治療では、上記以外の組み合わせは認められていません。
除菌療法におけるプロバイオティクスの効果
明治のLG21プロビオヨーグルトなどのプロバイオティクスは、ピロリ菌の除菌療法において、併用すると除菌率の上乗せ効果と副作用の軽減効果が期待されます。
2.抗生物質に対する耐性菌について
ピロリ菌は種々の抗菌薬に対して耐性を獲得し、耐性である抗菌薬を用いた除菌療法では除菌率が低下します。
特にCAM(クラリスロマイシン)耐性のピロリ菌の割合の増加と共に、上記の一次除菌による除菌率が低下しています。
日本ヘリコバクター学会が定期的に実施している全国規模の耐性菌サーベイランスの結果では、CAM耐性菌の割合は、2002年で18.9%、2003年では21.1%と徐々に上昇し、2010年~2011年では31%と上昇し、2013年~2014年の調査では38.5%まで増加してきています。
不十分な除菌療法が行われることは、耐性菌の出現を増加させることが懸念されています。
3.除菌中の副作用
除菌中には一定の頻度で、
・下痢
・軟便
・舌炎
・味覚異常
・アナフィラキシーショック
・発疹などの過敏症
・肝障害
・腎障害
などの副作用が出現します。事前に、副作用や症状出現時の対応についての十分な説明が必要となります。
整腸剤の併用が下痢の予防に効果があるため、当院では、耐性乳酸菌製剤が必ず処方されます。
4.除菌中の注意事項
除菌治療法に関しては、除菌中の服薬アドヒアランス、副作用の説明、除菌後の経過観察などについて十分説明しておくとともに、除菌療法施行医は除菌後にも責任を持ちます。
1)服薬アドヒアランス:標準治療では1日2回の7日間の計14回の服薬をきちんと行うように指導する。
2)喫煙:喫煙は除菌率を低下させる報告がある。
3)飲酒:MNZの服用中は飲酒によりジスルフィラムーアルコール反応が起き、腹痛・嘔吐・ほてりなどが現れることがあるので、飲酒を避ける。
4)食事のタイミングに気をつける。
5)除菌中の有害事象の説明:前述
6)除菌の確認をする:除菌療法後、ピロリ菌が完全に除菌されたかどうかを確認するために、検査(尿素呼気法など)を受けることが推奨されています。除菌が確認された場合でも、再度感染する可能性があるため、適切な予防策をとることが重要です。
7)除菌後の経過観察:除菌の成功後も一定の頻度で胃がんの発症が報告されている。必ず、定期的なフォローアップを指示する。
5.三次以降の除菌
三次除菌治療は「救済療法」の位置づけです。
STFXを用いたものや、高用量のPPI/AMPC療法などがありますが、いずれも研究段階の方法で、保険診療では認められておりません。残念ながら当院でも行っておりません。
希望される方には、大学病院の専門外来をご紹介しております。